その手で溶かして

「もしもし。初めまして。僕は真雪さんと同じクラスの遠藤と申します。」



ママと遠藤君が電話で話をしているなんて……


違和感なんて言葉では表せないほどの現実離れしたものを感じる。



「今日は僕のせいで門限を破らせてしまったんです。解らないところをしつこく真雪さんに聞いていたら、いつの間にか時間が過ぎていて。申し訳ありません。」



だけど、次から次へと嘘を並べる遠藤君に親近感を感じ始めた私。



「え?」



「はい。そうです。ご無沙汰していますが、正しいですね。」



「帰りはきちんとお送りしますので。」



「はい。それでは失礼します。」



ママの言葉を気にしながら、電話を切った遠藤君の言葉を待つ。



「はい。これ。」



私の元へ帰ってきた携帯電話。



「お母さんは俺のこと覚えていたみたい。遠藤医院の息子さん?って聞かれたよ。」



「ママが?」



「あぁ。」



私の交友関係になどまったく興味のないママが遠藤君を知っていたなんて、なんだか言葉にされてもしっくりとこない。



「娘なんかでお役にたてるなら、いつでも使ってやって下さい。なんて言われたし。」



「そう。」



遠藤君がママとの会話に嘘をつくはずはないとわかってはいても、嘘か何かを言われている気分だ。



今日のママは一体どうしたというのだろう……



私にたいして声を荒げていたと思えば、理解のある母親を演じたり……



裏があるのではないかと勘ぐってしまうのは、私の悪い癖だろうけど、疑わずにはいられない。


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