その手で溶かして
私が小学6年生になった頃、夜中にパパとママの言い争いが聞こえ、目を覚ますことが増えた。



一度だけ、リビングのドアの前で様子を伺ったことがあるが、怖さのあまり足が竦んだのを覚えている。



怒鳴り合う声に、物がぶつかり合う音……



話の内容をきちんと聞けるほど、冷静な状態ではなかった私は泣きながらベッドの中に潜り込んだ。



その日から、言い争いは何日も続き、夕食にパパの姿が消えた。



消えたといっても、週の半分は一緒に食事をしていた。



けれど、ママの中でパパは居ない存在になっているような感じがしていた。



幼かった私にはその状況をどうすることもできずに、ただ昔に戻ってほしいと祈るばかり。

< 410 / 442 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop