To.カノンを奏でる君
 ここまで開き直るオカマなどそういないだろう。

 その潔さが逆に好印象を与えたのか、同級生から支持を受けている。


「あ、そうだ。ノンノン、この間のコンクールの写真現像したわよ」


 直樹は肩かけカバンから封筒を取り出して花音に渡す。

 花音は受け取って中を確認する。


「わぁ…。なんか恥ずかしいね」


 まるで照れ隠しのように花音は笑った。直樹はそんな花音の頭を撫でる。

 可愛いものが好きな直樹にとって、ほんわかしている花音は癒しなのだ。


「あー、さすが直ちゃん。私が美化されるくらい綺麗に撮れてるー」


 というのも、直樹は昔からどこへ行くにもカメラ持参の猛烈なカメラ愛者だからだ。


「あら、ありがとー。ノンノンが可愛かったから、つい頑張っちゃったの」


 男子にしては高めの声ではあるが、一応は男子を思わせる声だ。

 そんな声でそんな事を言われては、やはり照れてしまう。


「放課後、一緒にお見舞いに行くわ。最近……そう、もう一ヶ月も顔出せてないものね」

「直ちゃん…」

「タータンには言ってないわよね?」

「うん」

「なら良し。折りを見てちゃんとアタシから話すわ」

「分かった」

「ほら、SHRが始まるわ。席に着きましょ」


(祥ちゃん、何て言うんだろう……)


 直樹の話で祥多が傷つくかもしれない。

 花音は祥多が傷ついた時にどう言葉をかけてやろうかと思い悩む。


 先生が扉を開けたのを見、花音は席に着いた。





< 16 / 346 >

この作品をシェア

pagetop