To.カノンを奏でる君
「ありがと」


 直樹は5号のケーキを三等分に切り分けているので、お礼だけ述べた。

 最後にお茶の2リットルボトルを出して袋を畳む。

 祥多はお菓子の袋を開けている。


 やがて、ケーキ、お菓子、ジュースの全てが揃った。


 花音が手にコップを持って立つ。


「ではではー! 第、…?」

「5回!」

「ぁ、第5回クリスマスパーティーを始めまーす!」

「イェーイ!」


 花音の言葉に乾杯する。

 祥多は二人のハイテンションに呆れながらも、それに付き合う。


「頂きまーす」


 花音は砂糖をふんだんに使用したガトーショコラを、もったいぶって小さく切り分けて口に運ぶ。

 ほろ苦いけれど、雪のように降り積もった粉砂糖が甘く広がった。


「んー、おいしい!」


 花音は幸せそうな顔で、落ちそうな頬を手で支える。


「そうそう、女の子のその幸せそうな顔が好きなのよー」


 直樹もまた、花音を見て幸せそうな顔をする。


 そんな最中、二回のノックの後に扉が開いた。


「お、やってるね。毎年恒例のクリスマスパーティー」

「松岡さん!」

「楽しんでるね」

「あ、松岡さんも一緒に楽しみますか?」

「私、仕事中よ。少し様子見に来ただけ……って、花音ちゃん?」

「はい?」


 由希は花音の額に触れる。

 花音は由希の突然の行動に目をしばたたかせた。


「少し顔色が悪いみたい。遅くまで勉強してるの?」
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