『A』
 
「そうだ!
君は、選ばれし人間だ
………天は、その試練に耐え得る人間にだけ、試練をお与えになるという
苦境の中を生きて来た君こそ、匹夫共を統べる王者となるべきなのだ!
少年よ、君には今日から武術を学んで貰う」

「そんな…僕には無理です
こんなに…弱いのに…」

「安心したまえ、武とは『戈を止める』と書く
元々武術は弱き者が強き者から身を守る為のものだ
フム、もっとも…嫌と言ってもやって貰うがね
君は私に買われたのだ
拒否する権利などない」

「………」

「学んで貰うぞ
王者の拳、八極拳を!」

「八…極……拳」

「八極とは大爆発のことだ
我々がいる宇宙が誕生したのは、ビッグバンと呼ばれる大爆発の力だ、知っているかね?
八極拳こそが、この腐った世界を生まれ変わらせる為には最も適した武術だ
…と、少年、そういえば名をなんという?」

「燕…です」

「燕か、なんとも可愛らしい名前だな…
王者となるには少し優し過ぎる…
………そうだな
燕…燕小龍という名はどうだ?」

「小…龍」

「大空の覇者である龍の名を冠していれば、王者としての風格は十分だろう
君は…小さいながらも龍になれ
決して負けない、大空を飛び交う龍に」

「空を…飛べる?」

「ああ、そうだとも
クツクツクツ
おめでとう!
燕小龍!!
…今日が君の誕生日だ」

「僕の…」

「!
僕等と…そんな弱々しい一人称はやめろ
そうだな、差し当たって…男子ならば、己(オレ)とでも言うのがよいだろうな…」

「己…」

「そうだ
…さぁ始めるぞ
君には、世界最強の男になって貰う」

「僕…いや、己が…世界…最強?」

「クツクツクツ
君ならできるさ、いや!
君にしかできない…
さぁ!まずは馬歩から始めるぞ…燕、小龍」

………………

………
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