ストレートラブ






「ヒロちゃんを食べないでよ!」と何度も振り返りながら去る綾ガキ。ふんっ、敵のいいなりになってたまるもんか!



「山下くん!」



うるさい敵がいなくなったところで、山下くんの名前を呼んだ。今からがあたしの戦いよ!



「やっとあたし達の時間が来たわ!さっ、一緒にあの夕日へ向かって…」



「じゃ」



山下くんはあたしの誘惑にも構わず、背を向けて歩き出した。え?えええ!?



「やっ、山下くん!?掃除手伝ってくれたじゃない!一緒に帰…」



「通行の邪魔で手伝っただけ。勘違いすんな」



そんなぁ~!期待させておいてその言葉はないよ~!慌てて追いかけるけど足音でバレるのか睨まれるし。もう…今日は諦めるかと肩を下ろして俯いた瞬間、



「………気をつけて」



小さく聞こえた大好きな声。顔を上げると何事もなかったかのように歩き出していた山下くんの姿。



聞き間違いなんかじゃない、山下くんの声だった。あたしのハートは一気にキュンキュン祭に。



「山下くんも!明日も大好きだよ~!」



聞こえているはずなのに、無反応な彼。山下くんは冷たいけど、無口でクールだけど……さっきの優しさは反則だよ。





< 100 / 332 >

この作品をシェア

pagetop