彼を捕まえろ!〜俺様男はハート泥棒〜



前を向くと斗真くんがお箸を出してお弁当をつつき始めていた



「あ…」


「何?」


「いや…」


食べてくれるとは思ってなかったからびっくりしすぎて思わずじっと見てしまう


同じく深雪ちゃんもそんな斗真くんを見てイライラしてるようだ



「とにかく…また来るから」


そう言って私をチラリと一瞥すると、元来た道を歩いていった



斗真くんはそれを気にするでもなくモクモクとお弁当から口に箸を運んでいく


「お前が作ったの?」


「え、うん…」


「上手いじゃん」


「あ…母子家庭だから普通だよ」


「ふーん」


そんな会話をしながら斗真くんはお弁当を一つ残さず食べてくれた



私は受け取った空のお弁当箱で涙を隠しながら自分の席に戻る



斗真くん


やっぱりあなたは優しいんだ



ねえ斗真くん


好きな人って


誰ですか?






< 159 / 315 >

この作品をシェア

pagetop