お願い、抱きしめて

手を伸ばしても届かなくて。だけど、届かせたくて…。


意味もなく会って、抱きしめたい──…


涙をぐっとこらえて、部屋のベランダに出た。


11月の夜は凍えそうなほど寒い。ぶるっと、一つ身震い。


「はあっ」と息が零れた。



『音也くんなら大丈夫だよ。その気持ちはちゃんと届くからね』



我慢してた涙が頬を伝う。温かくて、気持ちが…好きが溢れる涙。


オレは優しくて。


甘酸っぱくて。


胸がいっぱいになるような甘い初恋をした。


切なくて苦しくなった時もあったけど全然嫌じゃなかったんだ。


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