お願い、抱きしめて
二度目の初恋、春が来た

4月上旬。午前10時。


東京某所にある事務所に仕事の打ち合わせのため足を運ぶ。


オレ、相馬音也(ソウマオトヤ)は何を隠そう人気声優。CDだって出したらいきなりオリコンデイリー10位。


握手会を開けばファンが大行列を作って並んでしまうほどの人気ぶりだ。


個室に入り机を見るとオレ宛てのファンレターが何通か目に入る。


差出人は珍しく男からだ。


嫌な予感がするが、爽やかな笑みで開くと──


『勘違いアイドル声優(笑)』


『CD買って真っ二つにしてやった』


『カメラ目線乙\(^o^)/』


『俳優になれなかったから声優目指したの?』


予想は悲しいほどに的中。手紙を持つ手がぷるぷる震えた。



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