お願い、抱きしめて

何度思ったんだろう。何度願ったんだろう。


中学を卒業したら二度と会えないって思ってた。


だから…。



──音也くんなら絶対なれるよ



小さい時から夢だった声優になったらって。声優になって頑張ったら見てくれるかもしれない。


そう思い死に物狂いで厳しいレッスンを受けた。周りの人が聞いたら馬鹿にされるかもしれない。


だけど、この想いは全く変わらなく色褪せてく。


今だって…。



「あの…」


「?」



ページをめくる手を菜子さんがピタッと止める。


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