お願い、抱きしめて
「音也っ!?」
「…眠気覚まし」
驚いた深見の声が耳にキーンと響き頭を真正面から打ち付けて一人、心の中で嘆く。
頭は、ぼーっとして目も閉じかけ。唯一、車の中で匂うタバコの匂いが鼻を刺激して眠気を消す。
「あ…。そうだ、テスト赤点取らなかったって言ってたな」
「そ、れ、は…菜子さんと勉強したから…で、す」
テストの結果を褒めてくれる深見。反対に、オレは言葉が回って自分でも何言ってるのか意味不明。小さく呟いた言葉は車内に響く。
「誰、その女の子。好きな子か?」
「!?すっ…す~っっ!」
「ははっ」と茶化す余裕がある深見に対し、図星を突かれて、返す言葉も見つからず口ごもるオレ。
眠気が一気に覚めた。