観覧車【短編】

18年、生きてきた人生の中で
何度も出会うひとがいる。


名前も知らない
年齢も知らない


ましてやどこに住んでいるのかも
何をしているひとなのかも、
私は彼のことを何ひとつ知らないけれど。


この18年間、
私は何度も彼に出会った。


ある日はデパートの屋上で


ある時は駅のバス停で


出会うときは
何の前触れもなく突然だけど


何年すれ違っていなくても
私はすぐに彼だと気付く。


初めて会ったのは、
いつだったろう


小学生のときだった気もするし
もっとずっと
前のようだった気さえする


けれど気付いたら
私は彼を彼だと認識できるようになっていた。


そうやってもう何度、
私は彼とすれ違ったろう


たまに思い出すと
不思議な感情と共に
私は彼を瞼の裏へと映し出す


線の細い身体
長めの前髪
高い背丈


けれど顔を思い出そうとすれば
まるで煙にまかれたかのように
彼の輪郭はぼやけてゆく


不思議なひと。


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