世界の果てで呼ぶ名
那知は膝を折り、森番に向かう。
すると枝に止まっていた鳥達が足元に降りて来た。
あまりの数の多さに那知は驚き、少し困った様に笑った。
「何もしないよ。彼に伝えて欲しい事があるんだ」
そして森番に向かい、
「聖域の監視者だね? 心配しなくていいから」
その言葉に森番は短い息を吐きながら、じっと那知を見上げた。
「後でクリスが来ると思うから、俺の事は心配しないでって伝えといて」
森番は驚いた様にキィとひと鳴きした。
「ああ、そうだ。俺の名は那知だよ。そう言えば分かるから」
そう言うと立ち上がる。傍に居た鳥達が一斉に飛び立った。
那知は青空に舞う白い羽根を見つめて、小さくため息をつくと森の奥へと歩き出す。
森番が慌てたように付いて行く。那知の足元を廻りながら、懇願するかのように一生懸命鳴き続けていた。
それでも那知は歩みを止めずに森の奥へ、奥深くへと進んで行く。
しばらくすると森番は立ち止まり、悲しげな鳴き声を森に響かせた。