SilverBeast

　道のりは長く感じられたが、ちゃんと部屋の前にたどり着いた。

　畳敷きの和室なので、戸はふすまだ。

　小さく深呼吸をしてふすま越しにギンに声をかけようとしたとき、中からギンの声が聞こえた。


「唯……入ってこいよ」


　少し驚いたが、普通の人でも足音で誰かが来たことくらい分かるのだ。誰が来たかぐらい、ギンなら分からないはずがないと納得した。

　ふすまに手を掛け、ゆっくりと開ける。

　電気は点けられていなかったし、布団も敷かれていたけれど、ギンが眠っていた様子はなかった。