ブラッククロス

炎の指揮者

その火は私を捕らえて離さない。
揺らめく炎は美しく。
吹き消してもその熱さは冷めることなく、再び踊るように空にうねりながら轟音を鳴らして立ち上る。





その炎に見射られたたら…。
この体は…。






その瞳は…。
魔法にかかったように離さない。離れない。





小さな炎は次第に大きくなり全てを飲み込み灰にする。






不滅の炎は真っ赤に滴る血のようなルビーのように輝きを秘めていた。





遺骸の姿からはサタンのように恐ろしく…。
長い指先は杖を振るように炎を操る。





開放する不滅の魔力…。




バンパイアと亡者の力を併せ持つ呪われた存在。





バンパイアの王族の血を受け継いた母。





そして…。






バンパイアの王族でありながら禁忌を犯した父…。





本来なら生まれ落ちることはない存在を生み出した。





濃い血は濃い血を殺してしまうはずだった。
何の因果が…。






兄は妹を…。
手にかけた。
それは罪なら消えることはない。
呪われた存在を生み出した過程であり結果なのだから…。








私は…。見てしまった。
彼の孤独を…。
闇の中、ただひたすら走る漆黒の獣。
闇の世界の生き物。





漆黒の中には赤々と光る瞳…。
誰にも止めることは出来ない。
赤い揺らめき。






私は…。近づき過ぎて…。
この身を焼いた。






美しくも恐ろしいバンパイア。
漆黒と真紅の瞳を持っている。
長い美しい指からは炎を操り。緑の炎を纏えば遺骸の姿を表すサタン。





遺骸の指揮者。炎を操りしバンパイア。





闇をひたすら走る漆黒の獣。
私は…。






愛したのは闇の世界の生き物。





愛したのは闇の獣。






美しくも恐ろしい炎。






魅惑の瞳は私を捕らえて離さない。






孤独に一人走っていた。
私は…。止めることが…。
出来なかった。






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