ブラッククロス
魔力の力で召喚された二匹の龍が絡み合う。





力は互角のはずだった。




怒りは力を増すのか…。炎に包まれる部屋。





炎の龍が氷の竜の喉に噛みつき咆哮をあげる。





先に膝を付いたのは…。ネージュ。
魔力の疲労が見えた。






結界がさらに揺らいでいた。





炎に包まれる部屋。
アイスブルーの瞳が煌々と輝く紅い瞳を睨み付ける。





笑い声が響く。





「また逃げるか?ノア…。背負って行けるか?!ローズにお前は…。」






「黙れ!」





熱風が襲い…。二匹の龍が消えた。





壁に打ち付け鈍い音が部屋に響く。





そのまま炎は踊り狂い…。
棺にかざした指をタクトの様に振りながら、
「マセレーション…。炎の開華。」





氷の棺が音をたてて割れていく。





青い薔薇を抱き抱え呼びかける。




「ローズマリー…。」





覚醒しない華は眠ったまま…。





耳の元の黒い輝きに口を近づける…。





*******






暗闇は相変わらず絡み付いて離れない。





暗闇に溺れていた…。





葉のない樹木が揺れている。





手を伸ばすと何かがひっばった…。





「リュビ!」




そのままセピアの世界に飛び去る。





転がるように走り抜けて…。





木の上には…。





「ノア!」





いつものノアじゃないノアがいた。
笑ってこちらに微笑んでいた。





その手を取ろうとしてリュビが遮った。





耳鳴りがし頭が痛い…。




*******





目を開けたら…。紅い瞳が見えた。





「戻ったか…。」




瞼が重いし耳が痛いような気がする…。





覚醒し出したマリーは自分の置かれている状況に身動ぎ…。





「ちょっと…。あの…。」





細やかな抵抗も意味がなく耳から滴る血を吸うバンパイア。





紅い瞳は煌々と光を放つ。





アイスブルーの瞳を見ていた。





まるで見せつけるように…。
自分の所有物であると…。





焦げた豪奢な扉が開け放たれる。





強風が部屋に入り込み火が消えていく。





人影が過る。





駆け寄る執事は王を呼ぶ。





「ネージュ様!」





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