ブラッククロス
風は容赦なく天使を切り裂いた。






「かはっ!」
血を吐いて手をつく。





杖が振動し空気が歪む。



横に走る稲妻が風を掻き消す。





風が渦巻き雷が落ちる。
気配が消える翡翠の瞳。
風の中心の天使は探していた風の本体を…。
無数の目に見つめられている威圧感。





空気が風を切る。稲妻が更に本体を突き放した。




「ぐっ…。」





「ハァハァ…。これでお相子だね。」





城の一室に大穴が開いている。
金髪の少年はそこから落下する。
落下の瞬間…。天使は一撃を冷めた瞳に向けた。




横に走る稲妻はアイスブルーの瞳に映る影が遮った。





フッと現れた影。
「「グラス!!」」






盾となる執事に叫ぶ。






「がはっ!」
倒れる執事を受け止める。




天使は姿を消した。




「待て!」
翡翠の瞳が追うも気配が消えている。





振り返って駆け寄る。
まだ息はある。





「なんという無茶を…。」





癒しの光と風が包む。
うっすら目が開く、
「私は…貴方様の執事です…お考えはわかっていましたが、王命に背き…どうか…どうか。」





「もうよい…喋るな。」




アイスブルーの瞳が翡翠の瞳を見つめた。





「奴等は境界線だ。必ず仕留めよ。失敗は許さぬ…。翡翠の暗殺者よ。その力を示せ。」





ニヤリッとする翡翠の瞳。
「いいだろう…。久しぶりに暴れてみようか。俺も頭に来てるしな。」





クルクルした髪の毛から碧に輝く片方のみのイヤリング…。
繊細な細工が施されていた…。





白く輝く指輪に共鳴するように妖しく光る。




*******
境界線はもはやレッドオーシャン、その中を数人のバンパイアと白いフード三つ立っていた…。






碧眼のバンパイアと赤い獅子は互角にやり合っている。
タータンチェックの衣が切り裂かれる。






「そろそろ限界ではないかな?」





「なんの!」






大きな弧を描き高速に回転する剣が聖剣と火花を散らす。





獅子のパワーも負けずと押し返す。





にんまりと笑う獅子は聖剣に精霊を呼び出した。




空から無数の白い光が落ちる。バンパイアは飛び退いた。
光に当たると消えていく。





暗部の猛者達が減っては血が流れていた。





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