ブラッククロス

「ジョーカー…。聖務が出た。闇の境界線を探す。お前の力が必要だ。」





「！」
闇の境界線…。敵地というべき闇の砦。






「しかし、私は…。」





「これは聖務である…。許可する。我々を信じよ。」





信じていないわけではない。教会から出たことがない自分自身に不安なのだ。





「白の魔女？…。」






顔に出てしまった。
「御意…。神の御名において…。」






「案ずるな。」





「はい…。エグル。」
はにかみながらも答えた。





身分を隠し小さな教会に世話になる。灰色のシスター服に身を包む。





「ようこそ、シスターローズ。」
品のある茶色の瞳が見えた。





「よろしくお願いします。シスターエル。」






境界線にはまだ遠く…。




近くの森には物騒な話がある村人は近づくのを恐れていた。
窓ガラスが曇る。





「あの森には行かないように。」





「夜な夜な…。獣がうろついているようで。死体が…。」





死体…。
闇の生き物がいる。悪魔がいてもおかしくない。





「そうですか。」






任務と関係ないかな…。
境界線を見つけられるかもしれない。





外に出たことがないのに好奇心は抑えることができなかった。





じゃらじゃらと音が響き渡る。
何の音？






悲鳴が聞こえた。





森には物騒な話がある…。
夜な夜な獣が…。






黒い獣が確かにいた…。赤く光る瞳。
揺らいだ影は立ち上がる。





炎が飛んでいる。
どさりと力なく人が倒れた。





炎はこちらに向かってくる。
咄嗟に結界を張る。






紅い瞳は言った。
「お前は何者だ？」
挑戦的に笑う。






「悪魔よ退散してもらいます。」





「ほぅ？虫けらが私をか？クックッ…。」






炎に包まれるそれを見ていた。おぞましい姿はまさしく悪魔に等しい。
普通なら逃げ出す…。
炎を指揮者のように操る。紅い真っ直ぐな瞳…。





結界は完璧にそれを防いだ。





真っ直ぐな瞳が見えた。




青い瞳は真っ直ぐ見つめた。





彼女は…。その瞳が綺麗だと不覚にも思った。
揺らがない意志と情熱…。
なんて、真っ直ぐな瞳だろうと…。