【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
疑惑のアイツ
あの出来事以降、大きな問題もなく秘密な社内恋愛は順調に思えていた。
職場では上司と部下、プライベートでは恋人として・・・
「部長お呼びでしょうか?」
翡翠が部長室を訪ねると先客がいた。
その先客は和服姿の色白美人で立振る舞いにも品があった。
「あぁ。」
部長の態度がどことなくぎこちなくて、初対面の来客者を前に不安が翡翠を襲う。
「こちらは神谷グループ専務の神谷玲子様、神谷グループ社長夫人でもおられるお方で・・・」
「あなたが宝城さんね。」
部長の言葉を遮り、女が真っ直ぐな視線で翡翠を見つめる。
「はい。」
その凛とした雰囲気と冷たいまでに尖った視線に翡翠は息を飲んだ。
「今日はあなたにお話がありましてお邪魔しましたの。」
女は静かな口調で鞄の中から数枚の写真を取り出した。
「こちらの件でどうしても早急にお会いしなくてはと。」
夫人はテーブルにゆっくり1枚づつ写真を並べていく。
その写真には、雨の中一つの傘で寄り添う翡翠と琥珀の姿。
2人で買い物を楽しむ姿。
翡翠の家を訪れる琥珀の姿。
琥珀の家を訪れる翡翠の姿。
色んなシーンの2人の姿がテーブルに並べられていく。
「どうして・・・」
翡翠は血の気が引いていく感覚を感じていた。