ヴァイブ
隣の部屋から流行りの曲を

力任せに歌う声が聞こえる。


私は、玲二の家に住んでからの事を琴子に淡々と話す。

琴子は、黙って聞いていた。



話しが終わって、琴子が言った。


「七海は、玲二の事が好きなんじゃない?」

「それは…ない。」

すぐに否定した。


「何で?」

「…私は…
琴子がもし、男なら彼女になりたいと思ったんだと思う。
でも、玲二の彼女になりたいとは思わないんだ。」

「彼女になりたいと思わないからって
好きじゃないなんて事はないんじゃない?」

「………。」

「恋愛感情は、理屈じゃない。」

「どういう事?」

「七海は、愛さない。恋もしない。って自分の中で決めてるだろ。

何故、そこまで頑なに拒むのかは…実際は七海じゃないとわかんないけど…

玲二にもそんな感情は持ちたくないって抑えつけてるだけじゃない?」

「わかんない…」

「たまには、いいんじゃない?
恋してみても。」

「恋…」

「昔はしてたんだから、初恋を太一に。」


その名前を言われて、ビクンと心が揺れた。


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