キミがいなくなるその日まで




病室に戻る途中で一人の看護師とすれ違った。
それは私の部屋を担当している中村さん。


『あら、マイちゃん。診察お疲れ様』


ニコリと笑いかけてくる中村さんに私は軽く頭を下げた。

無言で通り過ぎようとした時『ちょっと待って』と引き止められてしまった。


振り返ると中村さんはポケットからある物を取り出した。


『これ渡しておいてってシン君に頼まれたんだけど……』


差し出してきたのは黄色い折り鶴。

私は見た瞬間、ため息をついた。


『いらない。あげるよ』

冷めた口調で言うと中村さんは意外な事を口にする。


『マイちゃん、シン君と仲良くしてあげてね』


そんな事を言われると思ってなかった私は思わず『は?』と聞き返してしまった。

中村さんは少し言いづらそうに言葉の続きを言った。


『シン君ね、年の近い子が居なかったせいかずっと一人で寂しそうだったのよ』


私は興味無さげにそっぽを向いた。

内心、だからなんなの?と言い返す。私には関係ないし私が仲良くしてあげる筋合いもない。

ただ年が近いだけで頼りにされても迷惑だ。


『苦手だから、そうゆうの』


そう吐き捨てて立ち去ろうとした時、私はある言葉に反応した。


『きっとシン君ならマイちゃんの気持ちを理解してくれるわ』


何を根拠に?別に私は理解されたいと思ってないし、ってゆーか…………。


『意外と無責任な事言うんだね』


思った事がとっさに口から出てきた。


だってそうでしょ?

理解くれる、なんてただのご都合主義じゃない。

私は止めていた足を再び動かし、歩き出した。


『シン君はね、もう3年待ってるの』


何を?

そうまた足を止めてしまいそうになったけど、
私は何も言わず病室に帰った。


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