崩壊家族
「さゆりンとこは、もう子供大きくなったでしょ?

高校生だったっけ?

いいよねー、手がかかんなくて」

そう言った静子に、
「ああ、うん…」

私は曖昧に笑って、曖昧に返した。

手がかからない、か。

かからないと言えば、そうかも知れない。

だって、帰ってこないんだもん。

「さゆりはクラスの中で1番にお嫁に行ったからねえ。

私なんかさ、33でようやく結婚だよ?

22で結婚が私の夢だったのにさー」

笑いながらそんなことを言う静子に、私の胸が痛い。

1番にお嫁に行っても、いいことなんてなかったよ。

そんな言葉を静子に向かって投げつけてやりたくなった。
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