崩壊家族
「私ね、さっきも言ったと思うけど、つきあっている彼がいるの。

その人あなたと違って、とっても私を大事にしてくれるの。

浮気もしないし、私の心配もしてくれる。

一緒に出かけてくれるし、一緒に食事もしてくれる。

あなたと大違いよ!

どうして彼と結婚しなかったのか、不思議に思ってるわ。

とっくの昔に出世コースを外れて、10歳以上年の離れた上司にパシリ扱いされて、今やリストラ寸前のあなたとは大違いよ!

天と地の差よ!」

未だに呆然としている夫から視線を外すと、寝室に向かった。

「私、その人と一緒にアメリカへ行ったら、結婚するつもりよ。

この前彼がプロポーズしてくれたから」

ベッドの隣にある引き出しを探した後、
「あった」

パスポートを取り出した。
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