キレイをつくる保健室

『この男に恋をしろ』

【花崎ナミside】

あたしは、日曜日にゆり先生のうちに呼ばれた。


先日は保健室に呼び出されて、怒られた。


「キレイじゃないと女じゃない」


……て、ゆり先生くらいだよ。そんなこと言ってるの。


しかも、

あたしに「キレイになりたくないか」なんてきくのは。


分かってるんだ、あたしも周りも。


……あたしはブス。

……キレイになんて、なれっこない。


パパやママも、昔はあたしにキレイになってほしいみたいだった。


でもさ。


小さい頃のあたしは、ジャム瓶(ビン)の底みたいなメガネに、糸のような細い目。

青白くて病気がち。

髪は太くて多くて、ねぐせ直すのに、たいへん。

身体が弱くて、よく熱が出たし、食物アレルギーがひどかった。


キレイにするよりも、あたしを丈夫にすることで、パパもママも大変だったの。


家で寝て過ごすことも、多かった。


今でも寝ているのは嫌じゃない。


家で楽なパジャマでウロウロして、好きなときに絵を描く。


絵を描く時間があれば、あたしは、それでいい。

メガネからコンタクトレンズにして、それで充分なんだ。

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