キレイをつくる保健室

「キレイになりたい。けど、それはヒロのためじゃない」

キレイなヒロにドキドキしていた。

今も。


繊細な指使いで、あたしの頬から耳を触る。

いつも豹の如く柔らかく、しなやかにあたしに近づきドキドキさせる。


ヒロ。

「止めて」

あたしに伸ばされたヒロの手をあたしは押し返す。

「触らないで」

「ナミ…」

ヒロの目に涙が浮かぶ。


「許してよ……」

ヒロの哀願は、あたしを怒らせるばかりだ。


あたしは、黙って家のドアを開けて荒々しくドアを閉めた。
< 72 / 210 >

この作品をシェア

pagetop