龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】

「三田先輩、やっぱり来てくれたんですね」

竜田川家に着き、優月さんに案内されて龍の飼育に使っている温室に行くと、美月がニッコリとしてわたしを迎えた。

目は泣き腫らして赤いけれど、拍子抜けするほど清々しい表情をしている。


温室には、美月の両親と優月さん、それから司先生を筆頭に羽竜分家の五人兄弟が揃っていた。

美月の足元では、赤龍が落ち着きなくウロウロとしている。

美月はこんなにたくさんの人に囲まれているのに、わたしを呼ぶ必要があったんだろうか。


「無理言ってすみません。悟さんはダメだって言ったんですけどね、先輩にもルドルフにお別れを言ってほしくて」

「ルドルフ?」

「あの子に名前をつけたんです。サンタクロースのトナカイの名前なんですよ」


知ってる

サンタのソリを引くトナカイ達の先頭にいる赤鼻のトナカイだ。


「あの子にさよならを言ってあげて下さい」


えっ……見なきゃダメってことよね?


わたしは思わず圭吾さんを見上げた。

< 105 / 120 >

この作品をシェア

pagetop