龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
「ねえ、お客様って誰が来てるの?」


口をモグモグさせながらわたしがきくと、


「代議士の常盤道三(ときわ みちぞう)先生でございますよ」


と、後から答える声がする。


げっ! 和子さん!


この家の家事全般を取り仕切ってる和子さんは、使用人と言うより家族。

礼儀作法に厳しいお婆さんだ。

肉まんが喉に詰まった。


「落ち着いてお召し上がり下さいな」

和子さんがわたしの前に水入りのコップを置く。


「あー、苦しかった――さっき見かけた人がそうかな? ずいぶん若い感じだったけど」

「ああ、それはご子息で、先生の秘書をなさってる道隆(みちたか)様ですね」

「へぇ 代議士って国会議員の事よね。圭吾さんってそういう人とも知り合いなのね」

「羽竜家は力のある旧家でございますからね。志鶴様もいずれはそういう家の奥方になられるんですよ」

「はい。よく分かっています」

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