龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
「僕は羽竜一の器用貧乏なのさ」

悟くんはカップにコーヒーの粉を入れながら言った。

「能力の種類は誰よりも多いし、強さも兄弟で一番。ただし意欲に欠ける。今まで一族のために役立とうなんて思った事もない。だから大輔は僕を軽く見る。僕に出来るなら、自分だって出来ると思ったんだろう。許してやって」


「わたしは、許すとか許さないとか言える立場じゃないわ」


わたしがそう言うと、和子さんと悟くんは顔を見合わせた。


「そろそろ自分の立場に慣れた方がいいよ」

悟くんが言った。

「結婚すれば、羽竜一族で圭吾の次に発言力があるのは君ってことになる」


そうなの?


「ましてや君は、圭吾に対する影響力が大きい――少なくとも一族のみんなはそう思っている」


「いやね。買い被りすぎよ」

わたしもミルクとお砂糖をトレイの上に並べた。

「悟くんだって言っていたじゃない。わたしはすぐ圭吾さんに騙されるって」


「そうだね」

悟くんは微笑んだ。

「それでも圭吾が一番に耳を傾けるのは君の意見だよ」

< 83 / 120 >

この作品をシェア

pagetop