潮騒
で、迎えた一月一日。


さすがにおせちは無理だったけど、でもあたしとマサキは本当に一緒に過ごし、そしてお昼に起きて、初詣に行く準備を始めた。


これから行くのは、高速に乗っても一時間とちょっとは掛かる場所にある、かなり有名な神社らしいけれど。


地元じゃ誰に見られるとも限らないとはいえ、でもまさかそんな遠出をするなんて。


と、思っている反面で、行ったことのない場所に少しばかり浮かれている自分もいる。



「向こう着いたら何か食おうか。」


「でもそれだと夕方から参拝って寒くない?」


「けど、夜になったら観光も出来ねぇじゃん。」


彼が観光とかするようなタイプだとは思えなくて、ちょっと可笑しかった。


マサキの助手席で他愛もない話に興じていると、まるで恋人同士みたいに思えてくる。


誰の目を気にすることもない狭い車内で、あたしは小さな幸せを感じていたのかもしれないけれど。


本当に平和だった。



「そういやチェンが、初詣一緒に行きたいー、とかまた騒いでて、あんまり腹が立ったから蹴り飛ばしてやったよ。」


「ちょっとヒドイって、それ。」


「まぁ、土産くらいは買ってやらなきゃマジで不貞腐れそうだけどな、アイツ。」


目に浮かぶから、笑ってしまった。


チェンさんがオッドアイで、例えどんな過去を持っていようとも、マサキは気にする素振りなんて微塵も見せない。


そういう友情みたいなのが、ちょっとだけ羨ましくも感じていた。

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