潮騒

雨音の行方

冬の終わりと春の始まりの真ん中のような一日だった。


男に抱かれたその足で、現金を手にお母さんに会いに行く。


いっそキャバなんて辞めてヘルスにでも転職した方が良いんじゃないかと、最近では思ってしまうけれど。



「大丈夫?」


例によって遅れて現れた彼女の顔色が悪い。


お母さんはごほごほと咳込んでいて、風邪なのか、病気なのかと思ってしまう。


が、あたしの心配に舌打ちを吐き捨て、



「アンタ本当は、あたしが死ねば良いとか思ってんでしょ?」


何を言ったって心が近づくことはないのだろうか。


今更わかったことでもないはずなのに、なのに突き放される度に悲しくなる。


お母さんはテーブルに置いた茶封筒をむしるように掴み上げた。



「アンタと話してると余計に気分が悪くなるのよね。」


ごめんなさい、とあたしが言うより先に、彼女はまるで汚いものでも見るような目つきで席を立った。



「それからお金のことだけど、これからはもう口座に振り込んどいてくれない?」


「……え?」


「だってこうしてわざわざ会わなくちゃならないこと自体、時間の無駄でしょ。」


お金だけの繋がり、か。


せめて顔を合わせることさえなくなるというのは、きっと喜ぶべきことなのに。


なのに、それでも心に穴が空いたような気持ちにさせられる。


お母さんにただ愛されたかったと思うことは、それすら罪なのだろうか。

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