潮騒
家に帰る間際、いつもあたしは、マンションの傍のコンビニに寄ることが日課になっていた。


最近は、睡眠薬代わりに酒を浴びるように飲まなくては、ろくに眠ることさえも出来なくなってしまったから。


ひとりになりたかった。


けれどひとりになるといつも、考えたくないことばかりが脳裏を支配する。


今日も買い込んだのは、3本のビールと煙草。


店であれだけ飲んでいるのに、まだ足りていない自分にはもう呆れることしか出来ないけれど。



「ありがとうございましたー。」


毎日顔を見るコンビニの店員。


お釣りと買った物を受け取り店を出たところで、あたしの足は止まってしまった。


だって目を逸らすことなんて不可能だから。



「…ル、カ…」


どうしてマサキになんて会ってしまうのだろう。


ずっと連絡することから逃げていたどころか、心の準備だってしていないのに。



「お前、もう仕事終わったんだよな?」


怪訝そうな様子の彼は、とりあえず乗れよ、と後ろにある車へと促した。


怒っていることくらいは手に取るようにわかる。


けど、でも、足が動かない。


するとマサキは、強引にあたしの腕を引いた。



「…痛っ…」


「うるせぇよ、乗れっつってんだろうが!」

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