潮騒
昨日、無事に美雪もファンタジーを退店した。


ふたりにとっては、だから今日が新たな一歩に繋がる日なのだ。



「レンがあんな風に変わったのは、間違いなく美雪のおかげだよ。」


「………」


「アイツがちゃんと笑ってる顔、また見れるようになったんだもん。」


だから、ありがとう。


あたしの言葉に、だけども彼女は首を横に振り、



「良い方向に結び付けてくれたのは、ルカさんです。」


「あたしは何もやってないよ。」


「でも、ルカさんがいてくれたからこそ、あたし間違えずに済んだんです。
間違ったものさしでレンのことを見てしまっていたら、今頃は…」


そこまで言い、彼女は少し困ったような顔をした。


決して偶然というだけで出会ったわけじゃないけれど、でも人の結び付きとは本当に不思議なものだ。



「そんなにあたしのこと持ち上げたって、奢ってやらないからね。」


またふたりで笑った。


それから店は大盛況のままに閉店し、べろんべろんに酔っ払ったレンを連れ帰ってやった。


彼は崩れるように我が家のベッドで眠っているが、まぁ、今日ばかりは許してやる。


美雪は朝から予定があるからと先ほど帰ったばかりだ。


満足げな寝顔にデコピンをしてやったが、それでも彼が目を覚ますことはなかった。

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