潮騒
部屋に戻った時、テーブルの上を片付けずに家を出ていたことに気がついた。


出しっ放しにしていた、過去の写真。


急いでそれをかき集めようとしたが、はらりと床に落ちた一枚は、運悪くマサキに拾われてしまう。



「これ、ちっちゃい頃の?」


あたしとお兄ちゃん、そしてレンが、仲良く3人並んで写っているものだ。


確か4歳くらいで、みんなで遊園地に行った時に撮ったものだったと思うけど。



「お前、兄弟いんの?」


「右がお兄ちゃんで、左がいとこ。」


「何でこんな頃のやつを、後生大事に眺めてるかねぇ。」


「気に入ってる写真だから。」


マサキの手から奪うようにそれを取り上げた。


正直、この話題にだけは触れられたくはなかったのに。



「仲良さそうだな。」


「そうだね、あの頃はね。」


「今は?」


「今はお兄ちゃん、遠くにいるから会えないし。」


雨音は途切れることなく響き続け、物悲しい部屋に影を落とす。


あたしはなるべく当たり障りなくだけ返答し、それよりさ、と話題を変えた。



「この雨、いつまで続くのかなぁ。」


「さぁ、どうだろうな。」


マサキは肩をすくめて窓の外へと視線を投げた。


とても寂しそうな瞳を揺らしながら。

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