潮騒
足音が、あたしを追ってきているような気がする。


だから後ろを振り返ることが怖い。


少し高いヒールを履いていたこともあり、途中で何度か転びそうになったけど、でも足を止めることなんて出来なかった。


息が切れかけたその時、少し先には偶然にもコンビニが。


あたしは逃げ込むようにそこに飛び込み、お菓子の棚に隠れるようにうずくまる。



「いらっしゃいませー。」


大学生風の店員はこちらを一瞥したが、すぐに隠すこともなくいじっていた携帯へと、再び視線を戻していた。


前に一度、ストーカーみたいな客にしつこくされて以来、こういうことには敏感になってしまう。


息を吐いて、バッグから携帯を取り出した。


が、掛ける先がない。


レンは仕事中だろうし、美雪は今日、アフターだとか言ってた。


だからどうしようかと電話帳を順に見ていた時、マサキの名前のところで指が止まる。


互いにまだ一度だって電話をしたことがない。


何より仕事とかしてても迷惑だろうし。


けど、でも、散々迷った末に、5回だけコールを鳴らそうと決めた。


ボタンを押すと、1コール、2コール、と機械音が響く。


と、その時だった。



『ルカ?』


電話口の向こうから聞こえた声に、どれほど安堵させられたことだろう。



「…あっ、えっと…」


『何だよ、どうかしたのか?』

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