人魚姫は籠の中で。



地上に初めて来れて、感激のあまりずっと歌って……それで。




それで―……








『お前は、もう俺のものだ…』



急に響いた男性の声。


この声、聞いたことがある。


私の身体の奥深くを痺れさせる、魅惑的な声。



「誰よ…私はあなたのモノなんかじゃないわ!…っ」



私の叫び声も、暗闇の中では空しく消えてゆくだけ。

誰も、何も反応を返してくれない。



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