恋愛依存症
《あれっ、忘れ物?》

紀子が振り返ると

「ちょっと待って。お願いがあるんだけど」

「えっ?」

「よかったら、一緒に働いてくれないかしら?」
と、突然誘われた。

「あのぅ、私、お勤めしていますので、お役に立てないと思います。ごめんなさい」

と紀子が断ると、その女性は

「仕事帰りに、ちょっとの時間で構わないわ。

私、新宿でお店をやっているんだけど、

よかったらすぐに返事をとは言わないから、

その気になったらいつでも電話をしてきてちょうだい」


と言って、名刺を差し出した。


そこには
クラブ「華」ママ
大代寿々香

お店の住所と携帯の番号が書いてあった。


紀子はひとまず名刺を受け取り、会釈をして、

急ぎ足で駅へ向かった。
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