僕は
第26章
     26
 事務所内で新年度からの須山の所長就任が噂されているが、須山本人は全く変わらない。


 ずっと書類を読み続けていた。


 個室で。


 ここ数年、須山も事務所で年を越すことが多いようである。


 だから大晦日に事務所に居残っていれば、所が取る出前は年越し蕎麦になる。


 今年もそうなりそうだった。


 僕も来年はどんな年になるのか、よく分からない。


 ただ、今年木崎朱莉の弁護を須山と一緒にやったことで、刑法の仕組みだけでなく、員面調書の読み込み方なども改めて勉強できた。


 僕ぐらいの年齢の弁護士だと、やはり雑用の方が多い。


 だけど司法試験受験の際に得た知識など、弁護士になるには基礎中の基礎で、知っていたからと言って何も特別なことじゃない。


 単に司法試験を通過するための最低限の知識である。

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