僕は
第31章
     31
 日弁連の新年会が新宿区内にある高級ホテルにて開かれたのは一月の半ばで、東京の街はまだ寒かった。


 連日晴れの日が続いていたのだが、さすがにまだ冬場だから冷え込む。


 僕もスーツの上からロングコートを羽織り、江美と一緒に事務所を出て、タクシーに同乗する。


 運転手に行き先を告げると、車が走り出した。


 事務所から車を使えば、ものの数分で着く場所にパーティー会場となるホテルがある。


 江美は幾分疲れているようで、時折座席に凭れ掛かっていた。


「大丈夫かい?」


「ええ。ちょっと仕事で疲れてるだけ」


「無理するなよ。いくら日弁連の新年会でも、体調悪くしてまで出席する必要はないからな」


「そうね。だけどちょっと風邪気味。さっき風邪薬飲んだけど」


「風邪引いてたの?」
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