僕は
第34章
     34
 膨大な資料を読み込んで、結論として分かったのが、発火装置を仕掛けた人間は他にいるかもしれないということだった。


 今拘留中の被告人じゃなくて、別の人間が。


 東京は晴れたり曇ったりの天気だが、冷える日がずっと続く。


 さすがにこの手の事件は冬場に起きやすい。


 放火するにしても、動機があるはずだ。


 新宿という街の雑居ビル内の一室に仕掛けるには、何か理由があるものと思われる。


 そのビルを一つ丸ごと焼かせてしまうだけの強烈な意味が。


 普通の人間じゃ想像もつかないと考えられた。


 だけど現に事件は起きている。


 それに死傷者も出ていた。


 放火でも殺意を伴ったものであることは一目瞭然だ。


 そしてある人物が犯行の起こった日にビルに出入りしていることを突き止める。
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