双華姫~王の寵姫~
毒物を自分で処理できる。


それが那智の生きてきた道を表している。




いくら当主達が気を配り目を光らせていても、その目を潜り殺しにくるものはいるのだ。それらを自分で処理できなければ生き残れない。そんな世界にいたのだろう。




「それでも那智姫様が大きくなられてからは減りましたよ。殺すより生きていてもらった方が得だと思ったのでしょう」




嫌悪感を隠そうともしない幸也の瞳には確かな怒りがあった。



「そんな那智姫様です。主上に話す前に自分で処理して終わりです・・・・」




それに・・・と幸也が呟いた言葉は王の耳には届いていなかった。幸也は思う。




(それに、那智姫様が素直に助けを求められる者はここにはいない)




続かなった言葉。幸也は過去を振り返り、似合わないが泣きたくなった。




「主上。那智姫様は何も言いませんが、傷ついてないわけではないのです。それだけは忘れないであげて下さい」




まるで祈るかのように幸也が王を見る。



「有栖川の姫は余に助けてほしいとは思わないだろうが、覚えておこう」




その言葉が聞けて安心したと言わんばかりに幸也は部屋を出て行った。



幸也が出て行った後王は気付く。




(・・・・何も解決していない・・・)





そうなのだ。那智の話は聞けたが、有栖川家当主への対応に那智への暗殺それらすべて何一つ解決していなかった。


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