時を止めるキスを


そんな過去の経験が言い訳を都合良く形成し、どんどん女性らしさを失っていたのだろう。


私に残ったのは塵積もって捨てられない妙なプライドと、社会人として備わった不要なモラルだけ。結局、中身はまるで成長していなかったのだ……。



「ねえ藍凪ちゃん、今日一緒にランチ行かない?」

ある日の午前中、秘書室の先輩である、柚(ゆず)さんから珍しくランチに誘われた。

「嬉しいんですけど、大丈夫ですか?」

「もちろん。でも、外に出るのは無理だから社食で許してね」

ためらいがちに聞けば、その心配を一蹴してしまう元気な柚さんに笑って頷いた。


「あれ、確か午後は……」

「ああ、それね。さっき常務の都合で取りやめになったの。
それで、連絡がてらのお誘いってわけ」


常務の第一秘書を務める5歳上の彼女。同じ役員を担当しているとあって、お昼を共にするのは稀なこと。


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