人心は、木漏れ日に似る
森へ入ると、ほのみや沖下が、江上冬乃の名を呼びだす。


「冬乃ちゃーん、どこー?」

「江上さん、聞こえたら返事してー!」


いるかどうか分からないのに叫ぶなんて、海里には恥ずかしいことこの上なかったが。

海里は思う。

……自分も、ほのみのように、他人を思いやれる人になりたい。


視界が木でふさがれた森の中では、自分の名を呼ぶ声は、きっと心強いだろう。

そう思って、海里は深呼吸をして、叫ぶ。


「江上!

いるなら出て来いよ、探しに来たんだ!」


ふと、海里は気付く。

海里の手を握る、ほのみの手。

ほのみは、冬乃の名を呼びながら、まっすぐ前を見据えている。

ほのみの手に、きゅ、と力がこもって、海里は少し、嬉しくなった。



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