ただ今、政略結婚中!
食材を買って家に戻り、夕食の支度にとりかかる。


作っても隼人さんは食べないかもしれないけれど、用意しておきたかった。


サバの味噌煮……好きかな……。


作り終わると、支度をしなくてはならない時間になっていた。


シャワーを浴びて、パーティーに行く支度を始める。


お気に入りのドレスを着て、ブロンズ色のヒールの高いパンプスに足を入れる。


出かける時間になるにつれ、心臓がドキドキと暴れはじめた。


口紅を塗る手が震えてうまく引けない。


震える理由は分かっている。


エステルの話を聞くのが怖いからだ……。



******



ヘンリーにエステルが書いたメモを見せると、私に困惑した顔を見せながらもタクシーを呼んでくれた。


もしかして、ヘンリーはふたりの関係を知っているの?


聞きたいけれど、話の内容が理解出来るほどの英語は出来ない。


すぐに来たタクシーに乗り込むと、緊張する気持ちを和らげようと努力しながら窓の外を見る。


隼人さんが私より帰宅が早かった時の為に、メモを置いてきた。


『出かけてくるけれど、心配しないで』と。


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