ただ今、政略結婚中!
******


「パパ!今なんて言ったの!?」


パパの言葉に私は耳を疑った。


にこにこと嬉しそうな顔のパパを見るのは久しぶりだった。


ママはワインをグラスに注いで、あ然となる私の手にグラスを持たせる。


「結婚相手が決まった。相手は紫藤不動産の紫藤隼人くんだ。小さい頃、何度か会っただろう?」


紫藤不動産――商業施設やホテル建設、海外リゾートを請け負う日本でも不動産業界のトップを争う企業。


パパの幼馴染の紫藤社長には息子さんが2人いる。


長男は社長である父親の右腕として実力を認められている誠也(せいや)さんと次男の隼人さん。35歳の誠也さんは5年ほど前に結婚されている。


「そんなこと急に言われても困るわ!」


「条件がいいんだ。お前が隼人君と結婚してくれれば、我社は紫藤不動産の後ろ盾で安泰になる。わかってくれないか?融資を受けられなければ、500人もの社員が路頭に迷うことになるんだ」


「私が犠牲になればいいって言うの?」


パパがここの所ずっと悩んでいたのはわかっているけれど……。






< 2 / 566 >

この作品をシェア

pagetop