ただ今、政略結婚中!
「明日で約束の2週間だな」


隼人さんの瞳が私を捉える。


「ぁ……そ、そうでした」


「それで、生理にはなりそうなのか?」


「そ、そんなこと、わかりませんっ!」


話したくない。


隼人さんは私の妊娠を望んでいなくて、エステルを選ぼうとしている。


避けられない話だけれど、今の私には辛すぎる。


「これからお仕事ですか?コーヒーでも入れますね」


話を変えて立ってみると、小刻みに足が震えているのがわかった。


隼人さんが何も言わないうちに、その場を離れてキッチンでパーコレータにコーヒーの粉と水をセットする。


その手も震えていて、動揺を隠しきれない私自身に戸惑っていた。


背後から肩をつかまれ、身体の向きを変えさせられた。


乱暴に振り向かされるまで、隼人さんがすぐ後ろにいるなんて気づかなかった。


「隼人さんっ!?」


「何を不安そうにしている?また襲われるとでも思っているのか?」


「そ、そんなこと思っていないですっ」


本当は隼人さんのキスが欲しいと思っている。


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