ただ今、政略結婚中!
そうだったんだ……私達、ふたりっきりじゃなかったんだ……。


内心がっかりしているものの、笑みを浮かべてふたりに頭を下げる。


「亜希、秘書の樋口くんだ」


黒髪を後ろでひとつにバレッタで留めている姿は有能な秘書と言った雰囲気。


きれいな人なのに、頭も良いんだなと言う印象。


才色兼備ってやつか、なんて思ってしまった。


「はじめまして。樋口と申します」


「あ、は、はじめまして。亜希です。よろしくお願いします」


普通なら、「主人がお世話になっています」とでもいうのだろうけれど、言えなかった。


本当の夫婦じゃないから。


「亜希さん、カンクンを楽しんでね?」


ジョンがにっこり微笑みながら、私に話しかけてきた。


私が頷いているうちに隼人さんは歩き始めてしまい、小走りで後を追った。




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