ただ今、政略結婚中!

残酷な言葉

「ずいぶんゆっくりだったわね」


突然現れたエステルに言葉が出ない。


ブランド物のバッグを肩から掛けて、おそらくブランド物のリゾートファッション、立っているだけでその場がぱあっと明るくなり、人を惹きつけるオーラがある人が、口元に笑みを浮かべて立っていた。


「幸せそうね?ひとりでニヤニヤしちゃって、見てられなかったわ」


そう言いながら私の方へと歩いてくる。


ターコイズだろうか、それとキラキラ光る石がたくさん散りばめられたリゾート風のぺったんこのサンダルを履いているのに、私の目の前に立った彼女は隼人さんのように背が高くて威圧感に満ちていた。


「これからエステですか?」


「違うわよ、あなたに用があって来たの」


まさか私に用があるなんて思わなかったから、驚いて心臓がドクンと跳ねた。


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