ただ今、政略結婚中!
私が座ると、エステルはバッグから2冊のハードカバーの本を取り出した。


なぜ本を……?


彼女はそれをテーブルの上に置いた。


食い入るように本を見てしまうと、表紙は彼女の写真だった。


おしゃれなカフェでくつろぐ姿で遠くを見つめている。


「これは私の自叙伝なの。英語と日本語。私の言いたいこと、わかるかしら?」


自叙伝……ということは……!!!


私の頭によぎった考えに、小さく悲鳴をあげてしまった。


声にならない口から洩れる音。


「バカではないようね?」


エステルは満足そうな笑みを浮かべて言う。


「この中に……隼人さんとのことが……書かれているんですね?」


全身が震え、彼女が次に言う前に出て行ってしまいたかった。




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