ただ今、政略結婚中!
「社会経験がない女はすぐにそう言う。なにもわからないのに勝手なことを言うんじゃない」


「しゃ、社会経験はあります!短大を出てから2年間事務をしていました」


「甘ちゃんなお嬢様では、お茶くみやコピーの毎日がせいぜいじゃないのか?」


あ、甘ちゃんなお嬢様ぁ!?


そう言う風に見られていたんだ……。


「父親の会社が倒産しそうになり、贅沢な生活から離れられないお嬢様は金持ちの夫を見つけたんだろう?」


酷い言い方……。


今にも溢れ出そうな涙を下唇を噛んで堪える。


この結婚を気にいってはいないと思ってはいたけれど、そんな風に見られていたなんて……。


怒りと恥ずかしさで、全身が小刻みに震える。


小さく息を吐き出すと、口を開いた。


「隼人さんも納得して結婚したのでしょう?そんなに嫌だったら結婚しなければ良かったんです」


「結婚がニューヨークにいられる条件だったんだ。本社に戻されてはかなわないからな」


はぁ?ニューヨークにいられる条件って……お義父様はすぐに日本へ戻すって言ってくれていたのに……。


私はあ然となり声も出ない。


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