ただ今、政略結婚中!
「あ、貴方には触って欲しくない」


「嘘つきだな。言葉とは逆にこんなに望んでいるのに?」


彼の手が私の頭を固定し、唇を奪う。


「ん……ぁ……」


ダメだ……彼にキスされると抵抗力が失われてしまう。


それでも持てる理性を振り絞って彼を突き離そうとした。


びくともしない彼の力。


キスを終わらせたのは彼だった。


「時間だ」


私のすぐ上に掛けられた壁時計に視線を動かした隼人さんは玄関に向かう。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


まだ何も話しあっていないのに……。


まだ小刻みに震える足で彼を追う。


「まだ何かあるのか?」


隼人さんは振り返ると、淡々を言う。


「まだ――」


「メールで送ってくれ」


私の言葉をさえぎり言うと、出て行った。


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